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焼肉店で「ロース」を頼んだときに感じる、ある素朴な疑問
皆様、こんにちは。黒5のそんどです。

焼肉店に足を運んだ際、皆様はまずどのお肉から注文されますでしょうか。塩味でさっぱりといただく極上の牛タン、脂の甘みが堪能できるカルビ、そして赤身の深い旨味が楽しめるロース。これらは焼肉における不動の三種の神器と言えるでしょう。中でもロースは、あっさりとしていながらもお肉本来の味をダイレクトに感じられるため、健康志向の方や、カルビの脂が少し重く感じられるようになってきた大人のグルメなお客様から、特に熱い支持をいただいております。
しかし、ここで少し不思議に思ったことはありませんか?

ステーキハウスや精肉店で「ロース(サーロインロースやリブロース)」と書かれたお肉を見ると、白く美しいサシ(霜降り)が全体にびっしりと入った、非常にジューシーで脂ののったお肉が並んでいます。それに対して、日本の一般的な焼肉店で「ロース」を注文すると、出てくるのはサシが比較的少なく、見るからに「赤い」ヘルシーな赤身肉であることがほとんどです。
目次
「なぜ、ステーキのロースはあんなに脂がのっているのに、焼肉店のロースはこんなに赤いのだろう?」
実は、この焼肉店における「ロース=赤身肉」という不思議な現象には、単なる偶然ではなく、日本の牛肉流通の歴史、そしてかつて日本中を揺るがしたある大きな出来事が深く関係しています。今回は、お肉を愛する皆様にぜひ知っていただきたい、ロースが赤い理由とその歴史的背景、そして黒5がこだわり抜く極上の赤身ロースについて、余すところなくお話しさせていただきます。
本来の「ロース」の姿。サーロインやリブロースがロースである理由
歴史の紐解きに入る前に、まず「ロース」という言葉の本来の意味と、お肉の部位としての定義について整理しておきましょう。

ロースという言葉は、英語の「ロースト(roast:焼く、あぶる)」が訛って日本に定着したものと言われています。つまり、「ロースト(焼く)するのに適した柔らかい肉の部位」という意味が語源です。そして、牛肉の解体新書においてロースと呼ばれる部位は、頭に近い方から順に「肩ロース(チャックアイ)」「リブロース(リブアイ)」「サーロイン(ストリップロイン)」という、背骨に沿った長大な筋肉の塊を指します。
これらの背肉にあたる部位は、牛の身体の中でも比較的動きが少ないため、肉質が非常にきめ細かく柔らかいという最大の特徴があります。さらに、日本の最高峰である黒毛和牛のA5ランクなどにおいては、これらの部位には非常に美しい網の目状のサシ(脂肪)が入ります。口に入れた瞬間に体温で脂がとろけ、濃厚な甘みと高貴な香りが広がるサーロインやリブロースこそが、学術的・部位的な「本来のロース」なのです。
では、なぜこのような脂ののった最高級部位のイメージを持つロースが、焼肉店では「赤身肉」として提供されるようになったのでしょうか。その謎を解く鍵は、昭和から平成にかけての日本の焼肉文化の発展過程にありました。
歴史の転換点。BSE危機と輸入サーロインが生んだ「赤身ロース」の定着
日本の焼肉店で「ロース=赤身肉」という常識が定着したのには、大きく分けて二つの歴史的な要因があります。
まず第一の要因は、カジュアルな大衆焼肉店が普及した時代における「輸入肉の提供」です。今から30年ほど前の東京を振り返ると、当時の多くの焼肉店では「カルビはバラ肉、ロースは輸入の背ロース(サーロインやリブロース)」を提供しているのが一般的でした。ちなみに、当時は大人気メニューであった生肉の「ユッケ」も、この輸入の背ロースの余分な脂やスジを職人が丁寧にトリミング(削ぎ落とし)して使用していたのです。

海外の牧草や穀物で育てられた輸入牛の背ロースは、日本の霜降り和牛ほど脂がのっておらず、全体的に筋肉質で赤身が多いのが特徴でした。輸入牛の背ロースは「赤身が多くてあっさりしているが、背肉なので柔らかくて食べやすいお肉」でした。これが多くのカジュアル焼肉店で「ロース」として提供され続けた結果、日本のお客様の頭の中に「焼肉店のロース=脂っこくなくて赤い、あっさりしたお肉」というイメージの土台が作られていきました。
そして、このイメージを決定づけ、今日の日本の焼肉業界のスタンダードを作った第二の要因こそが、2001年に日本で初めて発生した「BSE(牛海綿状脳症)騒動」でした。
2001年秋、国内でBSEの感染牛が確認されたというニュースは、日本中を大きなパニックに陥れました。牛肉の消費量は一気に激減し、特に海外からの輸入牛肉に対する不安感が急速に高まりました。一方で、安全性への疑念から買い手が一時的に極端に減少したことで、国産の和牛全体の市場価格が一時的に驚くほど暴落するという事態が発生したのです。良質な和牛が、これまでにないほどの低価格で取引される異例の状況となりました。
この危機に際して、多くの日本の焼肉店は大きな決断を迫られました。輸入肉に対する懸念を払拭し、かつ安全でお客様に安心して喜んでいただける国産和牛を提供したい。しかし、価格が下がったとはいえ、和牛のサーロインやリブロースを普段使いの焼肉価格で提供し続けるのはコスト的に合いません。

そこで多くの焼肉店が注目したのが、国産和牛の「もも肉(ラウンド)」でした。
もも肉は、牛の後ろ脚にあたる部位で、よく動かす筋肉であるためサシが入りにくく、非常にしっかりとした赤身が特徴です。和牛価格の暴落によって、このもも肉が非常に安く仕入れられるようになりました。そして何より、もも肉の切り口の鮮やかな「赤色」は、それまでお客様が親しんできた「輸入牛サーロインのロース」の赤身の見た目に非常にそっくりだったのです。
「これなら、見た目の違和感なく『ロース』として提供できる。しかも、和牛のもも肉は、輸入肉と比べてお肉自体の持つ旨味が圧倒的に強く、あっさりしていながら非常に美味しい!」
こうして全国の焼肉店が一斉に「国産和牛のもも肉」を「ロース」としてメニューに載せるようになりました。国産ならではの濃厚な赤身の美味しさと、それまでの赤身ロースのイメージが見事に合致し、お客様からも大絶賛をもって迎えられました。その後、牛肉の安全性が証明され市場が落ち着いた後も、この「焼肉店のロース=国産和牛のもも肉(赤身肉)」というスタイルは、日本の焼肉文化の中に完全に定着し、現在に至るまで引き継がれているのです。
また、BSE問題に端を発する輸入規制(特に米国産牛肉の輸入停止)によって、安価な輸入牛が市場に入らなくなったことも、国産和牛の赤身もも肉の採用を後押ししました。しかし、ここで非常に面白い現代の焼肉業界の「あべこべ現象」が起きています。

本来、カルビは「バラ肉(脂の多いお腹の肉)」、ロースは「サーロインやリブロース(脂ののった背中の肉)」を指していました。しかし歴史的な紆余曲折を経て、現在の多くの焼肉店では、ロースに「赤身の強いもも肉」を使うのが当たり前になっています。その一方で、最近ではカルビに対して、従来の脂が多いバラ肉ではなく、かつてロースの主役であった「リブロースやサーロイン」の上質な霜降り肉をカットして提供するお店が増えています。
つまり、本来「カルビ=バラ(脂)」「ロース=背肉(霜降り)」だった関係が、現代では「ロース=もも肉(赤身)」「カルビ=リブロース・サーロイン(霜降り)」となり、名称と部位の中身が完全に逆転する「あべこべ状態」になっているのです。こうした歴史的な変化や定義の逆転を知りながら焼肉を味わうのも、また一興ではないでしょうか。
黒5が誇るA5ランク極上赤身ロース。シンシンとカメノコの特徴
このように、「ロース=赤身のもも肉」という歴史的背景をベースに、私たち黒5では、単に安いからともも肉を出すのではなく、A5ランク黒毛和牛の最も良質なもも肉の部位を厳選し、究極の「赤身ロース」として昇華させて提供しております。
私たちがロースとして主に使用しているのは、もも肉の王様と呼ばれる「シンタマ(マル)」という部位です。シンタマは非常に大きな筋肉の塊ですが、私たちはこれを職人の手で細かく切り分け、それぞれの個性が最も引き立つ形で提供しています。ここでは、黒5が誇る二大赤身ロースの魅力をご紹介します。
シンシン(芯々)の魅力:赤身と極上サシのまろやかな調和

シンシンは、大きなシンタマの塊のまさに「中心部(芯)」に位置する、非常に希少で高価な部位です。もも肉の一部でありながら、きめが非常に細かく肌触りが良いのが特徴で、赤身でありながらもしっとりとした美しいサシが細かく入っています。口に運んだ瞬間に、上品で優しい脂の甘みが広がり、その後を追いかけるように赤身のジューシーな旨味が溢れ出します。脂のしつこさが一切ないため、何枚でも食べられる驚くほどまろやかな食感が魅力です。
このシンシンの美味しさを100%引き出すために、黒5ではスタッフがお客様の目の前で、表面を軽く滑らせるように焼く「ローリング焼き」という独自の技術で焼き上げます。絶妙なミディアムレア状態に仕上がったシンシンに、ツンと爽やかに香る本わさびを少しのせ、炊き立ての白ご飯を巻いてお口に放り込んでいただく瞬間は、まさに言葉を失うほどの至福のひとときです。
カメノコ(亀の甲)の魅力:牛肉本来の力強い「肉汁の旨味」を噛み締める
カメノコは、シンシンのさらに外側に位置する部位で、断面の繊維模様が「亀の甲羅」に似ていることからその名が付けられました。こちらはシンシンと比べて脂が極めて少なく、非常に純粋で濃い赤身肉です。肉質は適度な弾力があり、噛みしめるたびに、国産和牛の赤身が蓄えていた濃厚な鉄分と、アミノ酸の豊かなコクがじゅわっと口いっぱいに広がります。脂っぽさを全く求めず、純粋に「牛肉本来の野生的な旨味を楽しみたい」というお肉好きのお客様にとって、カメノコに勝る部位はありません。

カメノコは焼きすぎると水分が抜けてパサついてしまうため、職人仕込みの絶妙な薄切りにし、炭火の強火力で表面を一瞬にして焼き固める繊細な焼き方が求められます。これも黒5の訓練されたスタッフがベストなタイミングでお皿へお乗せしますので、特製の醤油ダレと一緒にお肉の凝縮された旨味を存分にご堪能ください。
黒5の「生」和牛とプロの焼き技術が、赤身の旨味を極限まで高める理由
もも肉という赤身の部位は、カルビなどの脂が多い部位と比べて、素材のコンディションや焼き方の優劣が如実に味に出てしまう、非常にデリケートな食材です。だからこそ、黒5では以下の3つの絶対的なこだわりを持って、お客様に最高の赤身体験をお届けしています。

- 一度も冷凍しない「生」へのこだわり
赤身肉を一度冷凍して解凍すると、肉の細胞壁が破壊され、そこから「ドリップ」と呼ばれる大量の旨味成分を含んだ水分が逃げ出してしまいます。黒5では、仕入れから提供に至るまで一度も冷凍を通さない「生の黒毛和牛」にこだわり続けています。だからこそ、焼いたときに肉汁が外に逃げず、肉の繊維の中にしっかりと留まり、驚くほどしっとりとジューシーな赤身肉に仕上がるのです。 - 職人の手作業による精密な「スジ引き」
もも肉には、大小さまざまな硬いスジや余分な皮膜が入り組んでいます。これが少しでも残っていると、噛んだときに口の中に残り、赤身の柔らかな食感を台無しにしてしまいます。黒5の厨房では、毎日熟練の職人が肉のコンディションを目と手で確かめながら、コンマミリ単位でスジを取り除くトリミング作業を行っています。この丁寧な下処理があって初めて、歯をすっと押し返すような心地よい柔らかさが実現するのです。 - 「焼き奉行スタイル」による完璧な火入れ
どれほど素晴らしい生の赤身肉を用意し、完璧に筋を引いても、お客様が網の上で焼きすぎてしまえば、お肉は硬く縮み、旨味は全て抜けてしまいます。赤身肉の美味しさのピークは非常に一瞬です。そのため、黒5ではすべてのお席において、専門の研修を受けたスタッフがお客様の目の前で、備長炭の火力をコントロールしながら完璧な状態に焼き上げます。一番美味しい状態でお皿にサーブされた瞬間を逃さずにお召し上がりいただけます。
今夜も極上の焼き加減で、皆様のご来店を心よりお待ちしております

焼肉店のロースが赤い理由。それは、日本の焼肉文化が歩んできたBSE危機という試練の歴史の中で、先人たちが安心と美味しさを追求した末に生まれた「国産和牛もも肉との出会い」の結晶でした。ロースが持つ本来の概念を超えて、今や日本の焼肉の主役の一つとなった極上の赤身肉。そこには、牛肉が持つ最も根源的な「肉の旨味」がぎっしりと詰まっています。
あっさりとして胃にも優しく、それでいて深い満足感をもたらしてくれるA5ランク黒毛和牛の赤身ロース。ぜひ今夜は、黒5の職人が丁寧にスジを引き、一度も冷凍せずに仕上げたシンシンとカメノコを、網の上で職人芸のように焼き上げるスタッフの技術とともにお楽しみください。お口に入れた瞬間の「生」ならではの圧倒的なジューシーさと、噛みしめるたびに深まるお肉の本来の美味しさに、きっと驚いていただけるはずです。
本日も、池袋本店、池袋東口店、そして新宿歌舞伎町店の各店舗にて、最高の状態で焼き上がる備長炭の炭火と、よく冷えたお飲み物をご用意し、皆様のご来店を黒5スタッフ一同、心よりお待ち申し上げております。

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